純愛バトラー
 ここに来る度に、目にしたくない現実を突きつけられる。

 こういう事だけは、絵理は妙に察しがいい。
 屋敷でのオレの態度だけで、あらかたの予想はついたのかも知れない。

 扉を開け中に入ると、カーテンで囲まれたベッドに、何本ものチューブで繋がれた女性が横たわっていた。

 オレの母親。草薙小夜。

 生命維持装置によって、かろうじて命を繋ぎとめている。

 一年半前の事故によって、脳の大部分を損傷し、回復は絶望的だと医師に言われた。

 それでも、一抹の望みを捨てきれずに、治療の継続を頼み込んだ。
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