純愛バトラー
 何度目のステップを踏んだ時だろう。

 少女はオレに気が付いて、たった一人の観客に手を差し出した。

 誘われるままに少女の手を取ると、彼女はにこりと微笑み、そのまま踊り続けた。


 ふわり。くるり。

 少女に合わせてステップを踏み。


 くるり。ふわり。

 少女に合わせてターンをした。


 正面から見た少女の顔は、やはり繊細な彫刻のようで。
 両の瞳は夜空を閉じ込めた紺瑠璃だった。

 冷静な自分が、この状況は変だと警告を発するが、どうする事もできなかった。

 ひとしきり踊った後で、少女は再び微笑んで。


 そのまま糸が切れるように崩れ落ちた。
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