純愛バトラー
 病院内は慌しかった。

 近場にいたナースを捕まえて事情を説明しようとすると、ナースは少女の顔を見るなり驚きの声を上げた。

「香々美(かがみ)さん!? 一体どこに行ってたんですか! 病室を抜け出しては駄目だって、あれほど……!」

 どうやらこの少女は入院患者のようで、よくよく見るとドレスだと思っていた薄紅色の服は、木綿のネグリジェだった。

「小言よりも、早く容態の確認をした方が。
 当直の医師は何処に?」

 オレの言葉で、ナースは我に返ったようで、足早にナースステーションへと向かった。

 別のナースが少女を病室へ運ぼうとしたが、少女の手はオレの服を掴んだまま離さない。

 仕方がないので、オレはそのまま少女を抱えて病室まで運んだ。
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