純愛バトラー
「今日はだいぶ調子よかったんだけどなあ。
 ……あなたがいなかったら、わたしあのまま中庭で死んでたね」

 あはは、と少女は笑った。

 笑って話しているが、内容は全く笑い事ではない。

 日本人離れした容姿だが、日本語は流暢だ。さっきナースが呼んでいた名も日本名だったから、ハーフなのかもしれない。

「死んでたって。笑い事じゃないだろ。残される家族の事も考えた方がいいんじゃないか?」

 我ながら、説教くさい台詞だと思う。
 しかも初対面の相手に、だ。

 しかし、取り残される家族の気持ちというものが、痛いほど解ってしまうオレにとって、その台詞は聞き捨てならないものだった。
< 229 / 401 >

この作品をシェア

pagetop