純愛バトラー
「家族……。わたしにいるのかな。いるって言っていいのかな」

 少女は不可解な物言いをして、オレの方に視線を向けた。

「いるだろう。少なくとも、回復を願っている人は。それとも、入院費は自分で払ってるのか?」

 オレがそう言うと、少女は首を横に振った。

「お兄ちゃんのおうちの人が払ってる。そういう、約束だから」

「そうか。じゃあ、少なくとも……えーと、名前なんていったっけ。香々美ちゃんでいいのかな」

 確か、ナースが少女をそう呼んでいた。
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