純愛バトラー
「香々美は苗字だよ。わたし、紅葉。漢字でモミジって書いて、クレハって読むの」

 少女は自己紹介をして、嬉しそうに微笑んだ。

「紅葉ちゃんか」

「紅葉でいいよ」

「そか。少なくとも、だ。紅葉が治療を受けられるように約束を取り付けてくれた人がいる訳だろ?」

「うん」

「その人は紅葉がいなくなったら悲しむぞ。きっと」

 オレがそう言うと、紅葉は困った顔をした。

「悲しむのは、わかるの。だけどね、わたし何もできないの。お見舞いに来てくれても、治療を受けさせてくれても、きっと全部無駄になっちゃう」

 きっともう治らないから、と紅葉は小さく付け加えた。
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