純愛バトラー
「一時は悲しいかもしれないけど、このまま死んじゃったほうが楽だよ。お互いに。だってわたしは足枷でしかないもの」

 その声と表情に苦悩や悲嘆はなく、ただ静かな絶望と諦めだけがあった。

 言葉にこそ出さなかったが、紅葉はこう問いかけていた。

 なのになんで生かそうとするの? と。

 そんなの、決まっている。

「足枷? ふざけるなよ。何もできない? 今喋ってるだろう。さっきは中庭で踊れただろう。そんな台詞は心臓すら動かせなくなってから言うもんだ」

 紅葉は何言ってんの? とでも言いたげに眉間にしわを寄せて口を尖らせた。
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