純愛バトラー
「何だその顔は。よいか、我ら学生にとって、筆記用具とは仕事道具に等しいものだ。自分に合う物を吟味するのは当然ではないか」

「そんな大げさな。ノートなんて書けりゃいいし、シャーペンなんかどれでも一緒だろ」

 その言葉が気に障ったらしい。すごい剣幕でそれぞれのノートの利点と欠点、シャーペンの機構の良し悪し、さらにはシャーペンの芯はどのメーカーが一番書き易いかとか、そんな事まで語りだした。

 ちなみに、絵理はルーズリーフとドクターグリップがお気に入りだそうだ。芯はUniのHBを使っているそうで。

 心底どうでもいい趣味情報だ……。

「……という訳だ。ルーズリーフも、真ん中の閉じ部分の機構によって使い勝手に差があってだな……。こら、陣。聞いておるのか!?」

「ハイハイ聞いてます聞いてます」

「それが人の話を聞く態度か! 全く、そなたという男は……」

 言いかけてぴたり止まる。

 不審に思って絵理の視線の先をたどると、長身の美女が一人、男に絡まれていた。
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