純愛バトラー
「さすがにまずくないか……?」

 やっとの事で声帯の機能を復活させて出てきた言葉は、非常にぎこちないものだった。

「まずいとは?」

「あの……オレ、男だし。ねぇ?」

「だから?」

「襲われても知らんぞ……。お前は何を考えてるんだ」

「そなた、自分で色情症でも変態でもないとつい先ほど私に釈明したばかりではないか。それとも、あれは嘘だったのか?」

「断じて嘘じゃないっ!」

「なら問題なかろう」

 駄目だ、埒が明かん。
 若くて健康な男子の生態を、絵理は理解していないようだった。

「また、キスとかされそうになったらどうすんだよ」

 昔の失敗を自ら引き合いに出すのは非常に心苦しいが、何とか絵理に納得してもらわなくてはならない。
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