純愛バトラー
「そして。手の内がばれている上で、再びそのような愚行を犯すほどそなたは馬鹿ではない。よって、色仕掛けを迫る理由がない。私の身は安全というわけだ」

「まぁ、打算的な面から見ればそうだな」

 絵理は、計算や打算といった人間の心理を非常に良く理解しているようだった。

 しかし、決定的に足りないものがある。

 感情論だ。

「打算的な面を抜きにしても、だ。
 陣は私に非常に気を使ってくれている。
 大事にされている事くらいは私でもわかる。
 そんなそなたを疑う事など、私にどうしてできようか。
 そうでもなければ、いくら私の執事といえど、隣で寝ることなど許したりはせぬ」

 ……結局、押し切られたのはオレの方だった。
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