純愛バトラー
「そういうわけだから、余計な心配はせずとも良い。もう夜半過ぎだ。休め」

 断定口調で言われて、オレは仕方なく布団に横になった。

 絵理は照明を消すと布団に入り込み、二秒と経たないうちにすやすやと寝息を立て始めた。

 密着、とまではいかないまでも、少し手を伸ばせば届く距離で絵理は無防備に寝ている。

 信頼されている事は素直に嬉しいが、異性として見られていない証明でもあり、それがじりじりと胸の内を焦がした。

 思わず手を伸ばしてしまいそうになって、オレは慌てて絵理に背を向けた。

 このまま、衝動に任せて何も考えずに行動できたら、どれだけ楽だろう。
 しかし、それは絵理の信頼を失うことを意味していた。
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