純愛バトラー
「しかし、まさか千沙子がミス条星の第一候補になっているとはな。全然知らなかった」

 帰り際、長船と顔をあわせた時に何気なくその話題を振ってみた。

「そうですね。僕も初耳です」

 長船はいつもどおりの口調で、しゃあしゃあと答えてのけた。

「チョットマテ。」

 こいつはもしかしたら、詐欺師としての才能もあるのかもしれない。

「詐欺じゃありませんよ。方便です」

 長船は眉一つ動かさずにそう答え、

「それでは失礼します」

 と自転車置き場の方へ去っていった。
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