純愛バトラー
「ねえ、陣。この子、だあれ? 彼女?」

 彼女、と言われて思わず浮かれそうになったが、そんな場合ではない。

「私の名は御剣絵理。陣の主人ではあるが彼女ではないぞ。恋人は別にいる」

 案の定、絵理はオレが答えるよりも早く紅葉の質問に答えていた。

 心なしか、ほっとした表情になった紅葉は、はた、と気付いたように絵理に向き直り、自己紹介をした。

「わたし、香々美紅葉っていいます。自己紹介が遅れてごめんなさい」

 内心、不躾な質問をした紅葉に絵理が説教を始めるのではないかとひやりとしたのだが、どうやら気まずい雰囲気になるのは回避できたようだ。
< 261 / 401 >

この作品をシェア

pagetop