純愛バトラー
「この前、友達ができたって話したでしょ? 彼が、そうなの。ね、陣」

 紅葉が嬉しそうにオレを兄に紹介した。

 紅葉の仕草のところどころが、青司を彷彿とさせたのは確かだが、まさか本当に兄妹だとは思わなかった。

 苗字が違うから気付かなかったとも言う。
 世間というものは、時として狭い。

 青司も紅葉の言う友人がオレだとは思っていなかったらしく、微妙な表情をしていた。

『よりによってお前か』とでも言いたげにオレを見たが、それも一瞬の事だった。

「まさか、二人が妹と知り合いだったなんて思わなかったな」

「私の方はつい先ほど知り合ったばかりだがな。そなたに妹がいると聞いていたが、彼女がそうか」

 そんなやり取りを、紅葉はきょとんとして見ていた。
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