純愛バトラー
 青司の彼女が絵理だと知った紅葉は、明らかに焦った様子だった。

 本人の目の前で『どんな物好きか一度見てみたい』と言いかけたのだ。無理もない。

 紅葉がコソコソと絵理に囁いた。

「ひどいこといってごめんなさい。あと、さっきいってた事、お兄ちゃんには内緒にして」

「聞こえてるんだが……」

 青司がそう言うと、紅葉は飛び上がってオレの後ろに隠れた。

「まったく……。俺のいない間に絵理さんに何を吹聴したんだ」

 青司は紅葉に詰め寄ろうとするが、紅葉はオレを盾にするように後ろに隠れているため、オレは兄妹の板挟みになる羽目になった。

 そんな様子を見かねたのか、絵理が青司に向かって口を開く。

「青司。そなたが優秀な店員だと紅葉から聞いていたのだ。よく指名されるそうではないか」

「それって、別に隠す必要が無いような……」

「照れくさかったのだろう」

 青司は納得できないようだったが、一つ溜息をつきこう言った。

「ま、絵理さんがそう言うなら、そういう事にしておくよ」
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