純愛バトラー
 母を見舞った後程なくして、青司はバイトがあるからと病院を後にした。

 聞けば、休みは労働基準法に引っかからない最低限の日数を取ってあるだけで、後は働き詰めという事だった。

 何故そんなに働き詰めなのか尋ねたら、ぼそりと一言。
 青みがかった黒瞳に、今までに見た事が無いほど暗い感情を宿して。

「これ以上、あの家の人たちの世話になる気はありませんから」

 青司と紅葉の苗字が違う事や、見舞いに来ているのが青司だけという状況を鑑(かんが)みるに、養子に入った先の家族関係は良好とはいえないのだろう。

 オレは複雑な思いで青司を見送った。
< 273 / 401 >

この作品をシェア

pagetop