純愛バトラー
 そろそろ日も傾き始め、夕刻が近付いてくる。
 オレ達ももうじき戻る時間だ。

「ね、今度はいつ来れるの?」

 名残惜しそうな顔で紅葉はそう尋ねた。

「うーん。来れる時は来るつもりだけど、はっきりと約束はできないな」

「そっか……。忙しいのね」

「それなりにな」

「絵理さんもまたきてね。お兄ちゃんとの馴れ初めとか、いろいろ聞かせてほしいな」

「うーむ。期待するほど面白い話かどうかは解らぬが、紅葉の希望は解った。次に来た時はそのことを話してやろう」

 絵理がそう言うと、紅葉はくすくすと笑いながら言った。

「絵理さんて面白いね。口調とか時代劇みたいだし」

「間違った日本語を話しているつもりはないのだが……。まあよい。きちんと養生するのだぞ」
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