純愛バトラー
「あはは。お兄ちゃんと同じような事いってる。Nurse困らせるのも程々にしておくね」

「困らせること自体はやめないんだな」

 オレがそう言うと、紅葉はこちらを見てにっこり笑った。

「うん、病室抜け出すのはやめない。退屈だし。それに……」

 紅葉はそこで言葉を区切ると、オレの服の裾をぎゅっと掴んだ。

「陣が忙しくていつも来れないなら、わたしが毎日お母さんのお見舞いに行ってあげる。
 目を覚ました時に、陣がいなくても、わたしがおはようって言ってあげる。
 だから、安心してね」

「そうか……。ありがとう、紅葉」

 外に出ると、太陽はほんのりと紅く色付き始めていた。
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