純愛バトラー
「女郎蜘蛛というのをご存知でしょうか。蜘蛛は齢四百歳を迎えると妖力がつき、絶世の美女に化けるとされています。
 いいですか。絶世の美女ですよ。
 強さ、存在感、美しさ、技量。これらを全て兼ね備えていないと、その役はできないということです」

「……………………」

長船の講釈を聞いて、千沙子はしばらく考え込んでいたが、やがて吹っ切れたように立ち上がった。

「まったく、仕方がないわね。私にしかできないっていうなら、やってあげるしかないわね」

 そうぶつぶつ独り言を言っていたが、おもむろに発声練習を始めた。

「あー、あー。こほん。
 オホホホホ!
 ……違うわね。
 オーッホッホッホッホッホッホッホ!
 ……こうかしら」

 オレ達はそんな千沙子をしばらく見やっていたが、青司がぼそりと一言つぶやいた。

「副会長がコワレタ」
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