純愛バトラー
 昼まで少し間があった。絵理のシフトは昼から午後にかけてという話だから、今行っても意味はない。

 あの絵理に『ご主人様』と呼ばれるからイイのであって、普段からオレのことを『陣様』と呼んでいる女生徒達から、今更『ご主人様』と呼ばれても、何の感慨も沸かない。

 オトコゴコロもそれなりに複雑なのだ。

 ふと、青司が演劇部で、今回役を割り当てられているという話を思い出し、劇の会場である小講堂に冷やかしに行こうと思い立った。

 小講堂は大講堂の隣の部屋で、大体三百人程度収容できるホールだ。

 設備も大講堂ほどではないが、基本的なものは全て揃っており、演劇部の公演はいつも小講堂で行われていた。
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