純愛バトラー
 中に入ると、劇は既に終盤に差し掛かったところだった。

 セイラという名の姫が主人公で、魔王にさらわれた婚約者の王子を助けに行くという、ありふれた冒険活劇だった。

 主人公のセイラ役の女生徒は背が高く舞台栄えする役者で、殺陣(たて)のシーンも鮮やかに演じていた。

 セイラは王子の命を盾に求婚する魔王を王子ごと張り倒し、魔王にさらわれた恐怖と、姫が助けに来てくれた喜びで泣き出す王子にハイキックをかますという暴力姫だった。

 男どものヘタレっぷりに嫌気が差したセイラは、王子との婚約を破棄して自ら皇帝に即位するというシーンで劇は締めくくられた。

 カーテンコールの時に青司の姿を探してみたが、見当たらない。

 劇そのものは、ありふれたシナリオながらもきちんと構成されており、楽しめた。

 青司の演技を見られなかったのは期待はずれだったが、それを差し引いても面白かったのでよしとしよう。

 さっきの劇の口直しとしては充分だった。
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