純愛バトラー
 1‐Aの教室は、やたらとファンシーな装飾が施されていた。

 入り口に、ポップな文字とレースで飾られた、ピンクの看板が立てかけられている。

『冥土喫茶☆ファーストキッス』

 これが店の名前らしい。

 冥土という、死後の世界を表す言葉の意味と、看板の醸し出す雰囲気が、見事な不協和音を奏でていた。

「なんか、すごい看板だな。すごいといえば店の名前もそうだが」

「店の名前は単に1‐Aを別の単語に置き換えただけだ。1がファースト。Aはいにしえの隠語で接吻(キス)を表すと聞いたぞ。由来さえわかってしまえば、それほどおかしな命名でもあるまい?」

 オレが聞きたいのは、何故わざわざメイドにあの文字を当てているのか、という事だったのだが、絵理には届かなかったようだ。

 確かに、ファーストキッスという命名もどうかとは思ったが。
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