純愛バトラー
 チョットマテ、これは……。

 オレが紺色のロングワンピースに着替え終わったのを確認すると、マコと呼ばれた女生徒はフリルのたっぷりついたエプロンを取り出し、オレに着せた。

 姫袖と呼ばれる、フリルのついた広がった袖を外付けし、形を整える。

 エプロンの形や、服の細部を丁寧に直し、一つ頷くとオレを椅子に座らせた。

「じっとしてて……くださいね……」

 そう言って、ポーチから化粧道具を取り出し、オレの顔に化粧を始めた。

 詐欺に遭った気分だったが、今更やめますとも言えない。

 化粧をされながら、看板に書かれていた、『冥土喫茶』という文字を思い出した。

 かわいいメイドを期待して来てみれば、肝心のメイドたちは女装をした男。

 メイドの衣装を着たごつい男にご主人様と呼ばれ、給仕されれば、死後の世界に来たような、荒んだ気持ちになること請け合いだ。

 まさしくこのクラスの出し物は『冥土喫茶』と呼ぶに相応しい代物だった。
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