純愛バトラー
 お互い、相手に勝つために手段は選ばなかった。

 恥ずかしい煽り文句も平然と言い、それがかえって客に受けたようだ。

 顔をつき合わすたびに、互いに火花を散らしながら和やかないがみ合いが展開されたが、それも『メイド対決』として、一種のショーのようになっていった。

「なんか、すごい事になってるわね……。喧嘩してるみたいだけど、ほっといていいのかしら」

「互いに切磋琢磨し、このクラスの出し物を盛り上げてくれているのだ。よきかなよきかな」

 気が付けば、ジニーとセイラ、それぞれにファンがつき、ファンクラブのようなものが結成されていた。

 合わせた視線から火花が炸裂し、いがみ合いが始まると、どこからともなく声援が飛んできた。

 冥土喫茶はティータイムを楽しむ客のみならず、メイド対決を楽しむ客でも溢れ返り、接客といがみ合いを繰り返すうちに、あっという間に文化祭の終了時刻になっていた。
< 329 / 401 >

この作品をシェア

pagetop