純愛バトラー
 扉を開けた主は、オレとセイラをまじまじと見ると女神のごとき微笑みを向けた。

「一体何処で油を売ってるかと思ったら、こんな所にいたの。陣だからジニー、青司だからセイラね。ホホホホホ。なるほどねぇ」

 女神は女神でも夜叉や鬼女の類だったようで、笑顔とは裏腹な鬼気迫るオーラが全身から立ち昇っている。

 1‐Aの生徒達は、顔に引きつった笑みを浮かべて後退ったが、千沙子は全く意に介さなかった。

 ニコニコと恐ろしいオーラを放ったまま、言葉を続ける。

「ミスコン同率一位、お・め・で・と・う♪
 二人とも、お祝いは何がいいかしら? メイド服? それとも、お化粧道具? どちらにせよ、バンドの演奏の後で優勝者の発表があるから、ちゃあああああんと来るのよ♪」

 ミスコン三位の千沙子は、言うだけ言うと、教室に恐怖と困惑を残して去っていった。

 しんと静まり返った教室に、カラスの鳴声が遠くから響いていた。
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