純愛バトラー
 心なしか青司の口数が少ないのは気のせいだろうか。

「さて、俺もそろそろバイトに行かないとな」

 帰ろうとする青司を、絵理が呼び止めた。

「青司。そなたずいぶんと顔色が悪いぞ。
 たまにはゆっくり休め」

「キノセイ。馬鹿は風邪引かないって言うし、大丈夫。
 ま、名残惜しいけど、これ以上話してると遅れそうだし、行って来るよ」

 青司は絵理にそう言って、男子寮へと向かった。寮から登校する場合、下手に乗り物を使うよりも、徒歩の方が早いのだ。

 絵理はそんな青司を不満そうに見送っていた。

 迎えが到着するまでには、まだ少し時間があった。

 何となく空を見上げると、ぽつり、と顔に水滴がかかった。
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