純愛バトラー
 水滴はそのまま勢いを増し、雨に変わる。玄関先に避難しようとしたその時に、遠くで青司が倒れるのが見えた。

 絵理が慌てた様子で青司に駆け寄る。

 オレは鞄から折り畳み傘を取り出し、絵理の後を追った。

「青司っ! 青司っ! 馬鹿者め、だから言ったであろう!」

 倒れてずぶぬれになった青司を抱き起こし、必死で身体をゆすっている絵理の頭上に、傘を開いて差し出した。

「あまりゆするな。かえって悪化する可能性がある」

 絵理はそこで初めて、我に返った様子でオレを見上げた。

「陣、青司が……」

「解ってる」

 青司の額に手を当てると、かなりの熱を持っていた。
 オレは絵理に傘を手渡し、そのまま青司を抱え上げた。
< 337 / 401 >

この作品をシェア

pagetop