純愛バトラー
 男子寮の玄関に入ると、事務室にいた白髪交じりの管理人に呼び止められた。

 それもそのはず。ここは女人禁制である。

 玄関と事務室は大きなガラス窓を隔てて隣あっており、出入りする生徒は事務室から丸見えだった。

 絵理は管理人に抗議したが取り合ってもらえず、オレ一人で青司を部屋に送ることになった。

 青司の熱はどんどん上がっている。
 一人にしておくのは、少々危険かもしれない。

「そろそろ迎えが来る時間だ。お前は一旦戻れ」

 絵理は暫く考え込んでいたが、不安そうな面持ちでオレを見上げると、懇願するように言った。

「すまんが、青司を介抱してやってくれ。頼む」

「ま、元からそのつもりさ。終わったら連絡入れるから、執事長に事情を話しておいてくれ」

 絵理は唇を噛んで頷くと、男子寮の玄関から外へ出て行った。

 扉を開けたその時に、雨の響きを残して。
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