純愛バトラー
 その中でとりわけ目を引いたのが医学書。同じ症例の本ばかりが何冊もある。その理由は大体想像ができた。

 ここ数日、暇が取れなくて病院に行っていない事を思い出し、青司に尋ねた。

「紅葉、元気か?」

「元気ならば入院なんてしていない筈ですが」

 全く可愛げのない返答が返って来て、再び外の雨音が暫く部屋に響いた。

 沈黙に耐えかねたのか、ぽつりと青司が言った。

「もって後数ヶ月だそうです」

 その返答は、オレに少なからず衝撃を与えた。それと同時に、信じられなかった。数日前に顔を出した時には、紅葉は元気に笑っていたから。

 絵理から貰った、ウサギの耳がついた帽子がお気に入りだとニコニコしていて、ずっとそれをかぶっていた。
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