純愛バトラー
「オレだって、信じられなくなった時はあったさ。信じたって言い方すら適当じゃない。

 すがりついたんだ。オレは、自分自身のために、母親の延命を選択した。
本人の意思なんか関係なく。

 自分でそうしておきながら、現状に耐えられなくなってそこから目を逸らす事もした。

 一年ほぼ見舞いに行かずに放置してたんだぜ? ありえないだろ」

 こんな事を、誰かに話すのは初めてだった。

 オレも青司も家族と呼べるのは一人だけ。

 しかもお互いに、その存在はひどく危うく、いつ消えてもおかしくない。

 立場は違っていたが、オレ達二人の状況は驚くほどよく似ていた。
< 346 / 401 >

この作品をシェア

pagetop