純愛バトラー
「そういえば、先週の土曜に二人で図書館に行った」

「それでそれで?」

「そこで、他ではなかなか見かけない面白い本を見つけたのだ」

「えー! どんな本? 恋愛小説?」

 紅葉は目をキラキラさせて絵理の返答を待った。

「違う。『進化する菌類』というキノコ図鑑だ。
 その本を見て二人で討論した結果、仮に核戦争が起こっても、菌類の力で環境の再生は可能だという結論に達した。あれはまことに有意義な時間であった」


 …………………………。


 二の句が継げない、とはまさにこの事。

 オレも紅葉も、視線を泳がせた後で、とりあえず何か言おうとしたが、喉から奇妙な音が出ただけだった。
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