純愛バトラー
 数十秒の沈黙の後で、紅葉がオレに小声で囁いた。

「デートって、想像してたのと、ずいぶん違うんだね……」

「というか、あれをデートと言うのは、デートへの冒涜のような気がするぞ……」

 オレは青司に少しだけ同情した。

「む。どうした、二人とも。なにやら深刻そうな顔をしているが」

「なんかすごいデートだなあと思って。絵理さんとお兄ちゃんて、もしかしていつもこんな感じなの?」

「うむ」

 大真面目に絵理が頷くと、オレと紅葉は互いに顔を見合わせた。
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