純愛バトラー
「思えば、今までこうやって誰かと語り合う時間など、殆どなかった。御剣家の長子として、覚えなければならぬこと、やらなければならぬことが多々あったからな。

 同年代の者と話をすることが増えたのは、陣が私の執事になってからだ。
もしかしたら、そのために父上は、年の近い陣を私の執事として雇ったのかも知れぬ」

 基本的に、絵理は身の回りのことはオレが手を貸すまでもなく、全て自分でやっていた。

 オレの仕事といえば、食事の給仕と、ティータイムに茶を淹れることと、あとは絵理が読んだ本や資料の整理くらいだった。

 これだって、あまりにやる事がないから、絵理に何か仕事をさせろと言ってやっと割り当ててもらったものだ。
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