純愛バトラー
 就任してしばらくの間、何の為に自分が雇われたのか本気で悩んだ。

 我儘を言うでもなく、誰かの手を必要としない絵理。

 例外は街へ外出する時だけだ。

 友人を作る暇などなく、勉強と習い事に明け暮れる日々でも、絵理は不満を持たず、その事自体に楽しみを見出してきたのだという。

 そうして、博識にも拘らず、一般常識を欠落させた少女が出来上がった。

 そのギャップこそが絵理の魅力でもあるのだが、同時に大きな弱点でもあった。

 忙しい日々の中で、彼女が置き去りにしてきたもの。

 きっとそれを取り戻すために、オレは絵理の側に置かれたのだろう。
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