純愛バトラー
「そっか。絵理さんもなんだ」

 紅葉がそう呟くと、絵理は紅葉に視線を向けた。

「わたしもね、陣と会うまでは誰かと話すことなんてほとんど無かった。
 ずっと病院から出られなくて、このまま死ぬだけなのに、生きていて意味があるのかなって思ってた。

 それで、あの日の夜、耐えられなくなって外に出たの。月が明るくてきれいで、このまま吸い込まれてしまえばいいと思ってた」

 紅葉はそこで一旦言葉を切ると、オレを見て微笑んだ。
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