純愛バトラー
「そうそう、昨日、陣のお母さんのお見舞いに行ったらね、お話してるときに、手が動いたの。きっと、わたしの声、届いてるよ。そんな気がするの」

 そう言う紅葉を見て、ふと心配になった。

 気力はともかく、体調の方は前よりも随分と辛そうに見える。

 病室がある階も違うし、行くだけでも大変なはずだ。

 心遣いは嬉しいが、あまり無理はして欲しくない。

「なあ紅葉。そうやって気遣ってくれるのは嬉しい。だけど、今は自分の事を第一に考えるべきじゃないのか?」

 オレの心配に、紅葉は首を横に振った。
< 361 / 401 >

この作品をシェア

pagetop