純愛バトラー
 絵理はそんな青司をじっと見つめると、重ねていた手をきゅっと握った。

 顔面蒼白なのは変わらないが、青司は少し落ち着きを取り戻したように思えた。

 前回紅葉に会ったのは、つい昨日の事。

 いつものように笑っていて、明日が楽しみだと喜んでいた。

 オレは、紅葉へのプレゼントが入った紙袋を、無意識のうちに握り締めていた。

 控え室に設置してある時計の音が、カチカチとやけに大きく響く。

 時計の音を聴くのが耐えがたくなった頃、控え室に医師が入ってきた。

 立ち上がったオレ達の視線が、一斉に医師に集中する。

 医師はうなだれて、申し訳なさそうに言った。

「最善は尽くしましたが……」

「……なぜ?」

 震える声が、青司の口から漏れた。

「何故なんですか! 昨日来た時はあんなに元気だったのに! どうして、急に、こんな!」
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