純愛バトラー
「青司。紅葉の弔いの準備は、私の方で手配しよう。そなたは少し休め」

「いや、いいよ。第一、絵理さんは親族じゃないだろ」

 そう突っぱねる青司に、絵理はきっぱりと首を横に振った。

「アメリカの祖母と、叢雲の実家以外に親族はおるまい? その両方が現在来れないとなると、そなたに一番近しいのは、必然的に恋人である私、という事になる。
 ……こんな時に支えるのも、恋人の役目だろう」

「でも、悪いからいいよ」

「そんなそなたを見るのは辛い。いいから私に任せて、少し休め」

 絵理は有無を言わさぬ口調でそう言うと、青司を無理矢理椅子に座らせた。

 そうして、オレの前まで来て、目を伏せた。

「……陣。青司を、頼む」

 悲しみを押し殺した低い声でそう告げると、そのまま踵を返してどこかへ行ってしまった。

 事務的な話を、あまり青司に聞かせたくなかったのだろう。
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