純愛バトラー
 ロビーに、オレと青司が二人きりで残された。

 オレは自販機で暖かいコーンスープを購入し、青司の隣に腰掛けた。

「とりあえずこれ飲んどけ」

 差し出されたスープを見て、青司は首を横に振った。

「……いりません。ご自分でどうぞ」

 暗く淀んだ声で青司は答えた。

 無理に渡そうとも思わなかったので、オレはそのままスープの缶を引っ込めた。

 あまりに深い悲しみの淵に立っているときは、どんな慰めの言葉も、気休めの言葉も無力だという事は、オレ自身が嫌というほど知っている。

 オレの母親が事故に遭ったのも、丁度高校一年の冬の事だった。

 青司の今の姿は、過去の自分を見ているようでもあり、また、もしかすると未来の自分かもしれないのだ。

 かける言葉も見つからず、ただ、青司と並んで座っていた。
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