純愛バトラー
「……医者の余命宣告なんて、当てにならない。本当にそうですね。あなたの言ったとおりだ。
 数ヶ月どころか、一月すら経ってませんよ。
 ふ……クク……ハハハ。アハハハハ」

 青司はケラケラと笑いながら、オレにゆらりと暗い視線を向けた。怒り、悲しみ、憎しみ、嫉妬、そんなありとあらゆる暗い感情を、涙の青でどろどろに溶かした瞳。

 その感情の矛先がオレに向けられているのが、はっきりと感じ取れた。

「両親の姓を捨てて、自ら人買いに買われた結果がこれです。
 全く、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差しますよ。

 おまけに、絵理さんとだって、いつまで一緒にいられるか解らない。

 さっき、電話で何を言われたと思います?

 嫁(い)き遅れた金持ち女と俺を結婚させるために、今相手を物色中らしいですよ?

 俺さえいなくなれば、絵理さんがあなたを異性として好きになるのは時間の問題です。

 せいぜい失恋の傷に付け込めばいいんじゃないですか?

 何もかも失って、俺に残されるのは、あの豪華な牢獄で囚人のように生きる人生。

 あなたはいいですね。自由で。
 羨ましい。妬ましい。消してやりたいほどに」
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