純愛バトラー
「青司か。どうした? ……そうか。解った……。
 気にするな。そなたのせいではない。
 ……ああ。私もだ。……新学期にまた会おう」

 絵理はパタン、と携帯を閉じ、そのまま机の上に置いた。

 そして、オレの方に振り向き、さびしげな表情で笑った。

「服について悩む必要がなくなった。今日のデートは取りやめになった」

 そして、そのまま机に座り、日記帳を取り出した。しかし、何を書くでもなく、自分が過去に書いた文字を眺めたまま、絵理は人差し指と中指で挟んだ右手のペンを、宙に彷徨わせるばかりだった。

「ま、あんまり気にするな。
 デートなんかいつだってできるさ。
 予定空いて暇なら、オレが……」

「もう無いのだ。次は」

 穏やか過ぎる絵理の声が、この空間の空気を止めた。
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