純愛バトラー
「ノブレス・オブリージュという言葉を知っているか?」

「ノブレス……響きからして、フランス語か?」

「そうだ。実は、何処の言語かというのはあまり関係が無い。英語ではノーブル・オブリゲーション。日本語では貴族の責任、と訳される」

 オレの質問には答えず、絵理は淡々と話を続ける。

「財産、権力、社会的な地位には責任が伴う、という概念だ。

 組織の長、というのはある意味で人柱だ。

 抱える者たちを守るために、自分を犠牲にしなければならない時もある。

 それゆえに、広大な屋敷に住み、裕福な生活が許されているのだ。

 我らの祖先が築き上げてきたものを守るためには、それ相応の対価がいる。

 その対価の一つに婚姻が含まれるなら。
 それは甘んじて受けねばなるまい。

 ……私にも、既に何件か話が来ている」

 絵理の言葉は正論だ。

 それこそ、嫌になるくらいの。
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