純愛バトラー
「……聞いてないぞそんな話」

「今初めて話したのだから当然だ。
 もっとも、我が家は叢雲家のように切迫した状況にあるわけではないから、すぐにすぐ、という訳ではないがな」

 絵理の声には、悲壮感は全く無かった。

 自分自身の境遇を、宿命として全て受け止め、淡々とこなそうとしているように思えた。

「私は、御剣家の長子として生まれた。
 いずれ家督を継ぎ、御剣財閥を率いていかねばならぬ。
 そのために今まで生きてきたのだ。
 私の代わりは誰もいない。だから私がやるしかない」

 私は御剣財閥を維持するための駒。

 絵理の言い分は、オレにはそう聞こえた。
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