純愛バトラー
 絵理と一緒に過ごして、一つ気付いた事がある。

 彼女は物を欲しがらない。

 絵理が求めるものは、全て何かの目的の為に使われるものばかりで。

 自分自身のために、何かを欲しがった事は一度も無かった。

 絵理が娯楽と言い切っていた読書でさえも。

 いずれ組織の長になるための糧となるようなものばかりだった。

 本当に絵理が置き去りにしてきたものは、一般常識とか、同年代の友人とか、そんなものではなくて。

 他ならぬ、彼女自身だったのだ。

 捕らえ切れないはずだ。

 見つからないはずだ。

 だからオレはもう一度、絵理に問う。

「絵理。お前は、それで、いいのか?」
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