純愛バトラー
 オレの胸が、絵理の涙で濡れる。

「なあ絵理。お前、大事な事忘れてるよ」

 オレは絵理を抱きしめたまま、言葉を続けた。

「何かを守ろうとするなら。
 誰かを守ろうとするなら。

 まず、自分自身を守らなきゃ駄目だ。
 自分自身の幸せを考えないと駄目だ。

 自分自身の幸せも解らないのに、他人の幸せなんか、解るわけが無いだろう」

「幸せ……。私、の?」

「オレは、お前が自分のために何かを欲しがるのを見た事が無い。

 お前が必要とするものは、全て何かの目的で使われるものばかりだ。

 お前自身が欲しいものは何だ。
 お前は、何故泣いている?

 今、お前の心にあるものは何だ?」
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