純愛バトラー
 千沙子はそっぽを向いたまま、こちらを見ずに答えた。
 ふてくされた時の、こいつの癖だ。

「不貞腐れた挙句、開き直ってんじゃねぇよ。
 お前のやった事は犯罪だ。第一、絵理は関係ないだろう」

「関係ないですって? 貴方、この子が裏で何やってるか知ってるの?
 貴方のいないときは他の男をはべらせて、いい気になって。
 ……私から貴方を奪って、そんな事をしている女を許せると思う?」

 青司のことを言ってるのか。やれやれだ。

「んな事は知ってる。というか、今日はその男と、三人で一緒に昼飯食ったぞ。嫉妬に狂って邪推ばっかしやがって。だから女は面倒なんだ」

「その嫉妬を駆り立てたのは一体誰だと思っているのよ! 私よりもその子が良くなったから突然出て行ったんでしょ。正直に言いなさいよ」

 千沙子の言い分に、オレは心の底から溜息をついた。まったく……。人の事情が全て色恋で片付くと思ってるのか?
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