純愛バトラー
「順番が逆だ。お前の家にいられなくなったから出て行った。絵理の家に雇われたのはその後。ついでに言うと、絵理に会ったのもな」

「私の家にいられなくなった理由って何?」

「それは言えない」

「ふざけないでよ!」

 千沙子がオレに詰め寄った。

「じゃあ言うよ。お前に飽きた。それだけ」

「嘘ばっかり」

「嘘じゃねーよ」

 嘘だけどな。

「嘘だわ。貴方、嘘つくときいつも自分の髪に手をやって、私から目を逸らすの。上手に嘘つきたいなら、その癖直した方がいいわ」

 千沙子に言及され、無意識に髪にやっていた手を思わず凝視した。

 自分にそんな癖があるなんて、気付いてなかった。オレのこと、結構良く見てたんだな……。

 あっさり見破られて少々気まずい。
< 75 / 401 >

この作品をシェア

pagetop