純愛バトラー
 正直、千沙子が自分が見えなくなるほど追い詰められるなんて、考えてなかった。
 安易に考えて、何のフォローもせず突き放しただけだった。
 絵理を直接襲わせたのは千沙子だが、そうさせた責任はオレにあるんだよな……。

「まったく……私は結局そなたらの壮大な痴話喧嘩に巻き込まれただけか?」

 黙って話を聞いていただけだった絵理が、いつの間にかオレの隣に来ていた。
 ぼろぼろになったスカートと、脚の擦り傷が痛々しい。

「千沙子とやら。そなた、馬鹿だろう」

 絵理は傷心の相手にも容赦は無かった。

「事実確認もせず、一方的に決め付け、挙句暴行の教唆。一時の感情で身を滅ぼしてどうする」

「本当、その通りね。私の思い込みで、貴女に随分と酷い目に合わせてしまったものね。
 ……本当に、ごめんなさい……。私にできることなら何でもするわ」

「ふむ。私の意図するところが伝わっていないようだな」
< 78 / 401 >

この作品をシェア

pagetop