世界は変わる ー俺様の愛した男ー【BL】
返事をするのも億劫で……
俺は無言のまま、ドア一枚隔てた向こうにいる奴が去るのを待った。
しかし…………
コンコン、コンコン。
重大な用があるのか、なかなか去ろうとしない。
「なんだ?」
いつまでもいられては困る。
俺は少し声のボリュームを上げて、ドアの向こうに聞こえるように返答した。
……しょうもない用なら、追い返してやる。
そう思ったのだが……
「お仕事中に申し訳ないね」
入ってきたのは、予想外の人物だった。
「校長…何の用ですか」
校長がわざわざここに出向いてくるなんて、今までに数えるほどしかなかった。
緊急事態でも、起きたのか?
俺が眉を顰(ひそ)めると、校長は「そんなに深刻な話じゃない」と笑って、目の前のイスに腰掛けた。
「実はね……
うちの学校に、男子生徒が一人転入してくることになったんだ」
「………転入生」
あまり、聞き慣れない言葉だ。
俺がそれを復唱すると、校長は満足げに頷いた。
俺がその言葉を聞き慣れないのは、当然のことだった。
この学校に入って、早三年。
それなのに、転入生が来たなどという話は、ただの一度も聞いたことがなかったのだから。
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