恋*クル
全員が乗り終えて、バスがゆっくりと動き出した。
ちらり、と、あたしは隣に立つ彼の横顔を見る。いや、見上げる。
鼻筋の通った顔立ち。
ぼんやりと窓の外を眺めている。
「あ……あの、さっきはありがとうございました」
「え? あぁ、いや……」
ちらりとあたしを見て、彼は少し照れたように返事を返した。
そのはにかんだような笑顔に、あたしはドキッとする。
これまで恋愛には無関心だったあたし。
胸がドキドキしてしまって、自分の顔が火照りだすのを感じる。
あぁ。
あたしもとうとう、恋ってやつに出会ったしまったのかもしれない。